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心配しているのは大学生活への不安ではなく、貧乏神に憑りつかれていることのほうなのだが。
と、乾太郎に言ったところでどうしようもない。いっそ、お金の心配は今は考えないようにしよう。
そして、その不安を払しょくするためにも、『あやかしインベスティゲーション』の仕事で稼いでおこうと考えた。
「かんたろ、今日はあやかしの仕事、気合入れて頑張ろう! 稼ぐぞ!」
「たくましいぞ、キララちゃん!」
熱意を燃やして、二人はマヨヒガへと向かうのだった。
――そして、『あやかしインベスティゲーション』の衾を開いてみると、すでに一人、ベストを着込んでいる身なりの良い男性が座布団に正座で待機をしていた。
「あ、あれ? どちらさまでしょう」
「先日、ビラを受け取った。頼みたいことが合って訪ねたが、あやかしの為の調査員というのは君かね」
ナイスミドルな壮年だった。口調もしっかりしていて知性を感じる。見た目だけなら、どこかの資産家だろうかと思うほどだ。白髪はなく、真っ黒に染め上げているようで、髪はきっちりとオールバックにされている。腕には重厚な時計が巻かれていた。
「ごめんなさい、お待たせしました。ここがあやかしインベスティゲーションで間違いありません。どんな調査依頼ですか?」
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