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「うむ。まずは私の自己紹介と行こうか。私はこういう者だ」
そう言うと、名刺入れを胸元から取り出し、一枚月に手渡した。
乾太郎と共に覗き込むと、そこにはこう書いてある。
おみくじの始祖、運勢を司る良源。元三大師、神宮寺清。
「ガンサンタイシの神宮寺さん?」
ピンとこない顔をした月に、清は眉をくい、と持ち上げた。
「分からんか」
「へ? ええと……」
貧乏神、疫病神……。今度は何のあやかしなのかと名刺と本人の顔を見比べてみたが、元三大師という名称に思い当たるものがなかった。
「嘆かわしい……」
そんな月の反応に、力なく肩を落とす清に、月は申し訳ない気持ちになって、ぺこりとお辞儀して詫びた。
「ごめんなさい、若輩者で」
「……いや、いい。昨今は知らぬものが多いことは知っている。マヨヒガにやってくる人間ならばと少し期待していただけのこと」
「元三大師は、おみくじを最初に考え付いたって言い伝えられてる昔のお坊さんだよ。正月の三日におっちんじゃったんで、『元三』」
乾太郎が清の紹介を砕けた様子でしてくれた。偉いお坊さんだったらしい。徳を積んで神様になったのだろう。
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