消えたおみくじ

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 おみくじなら、月だって初詣の時、毎年やっている。でもおみくじを最初に誰が作ったのかなんて考えてみたことすらなかった。  目の前の壮年の男性がそうだとしたら、それはなんというか有難いことなのだろうと思った。 「ええと、拝んだほうが良い?」 「気にすることはない。それよりも依頼の話を進めたい」 「あ、そうでした。どんなご依頼ですか?」 「勿論、『おみくじ』の相談だ。おみくじを引いて見たことはあるかね?」 「ありますよ」 「引いた後、どうするね?」  はて、と一瞬、月は首をひねった。おみくじを引いた後というと……。 「えっと、神社の木の枝とか、用意されてるヒモとかに、結びます」 「左様。おみくじは、引くことやその内容に目を奪われがちであるが、真に重要なのは、『結ぶ』こと。縁結びの儀式にある」 「縁結び……」  そう言えば、先日疫病神の蔵馬からの依頼の報酬も、『御縁』だと言われた。  五円玉と通じて、縁を結んだことで、月はあやかしと友情を育んだのだ。 「あやかしにとって、縁は何よりも重要視される。繋がりがあることこそが、富になるんだ」  乾太郎が優しい声で、月に教えてくれた。     
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