消えたおみくじ

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 思い返せば、乾太郎も、妙に月に対して繋がりを持とうとしているように思う。家から出ることを進めながらも、その本心は、月と離れることを悲しんでいると思わせるような態度を垣間見せることがある。 「人の世が、『金』で物事をやりとりするように、オレたちあやかしは『縁』を結ぶことが生活に必要になる。日本の通貨が『(えん)』なのは、オレたちあやかしの『(えん)』のやりとりを真似てのことなんだよ」 「へえええ! ほんとに? なんか、凄いね」 「話を戻すが、おみくじを結ぶことは、運勢を神に縁結びすることだ。そうすることで、元三大師である私は、より強い『縁』を手にすることができるわけだが……」 「何か問題があるんですね?」 「うむ」  気難しそうな清の顔立ちが更に険しいものになった。 「実はその『縁』を横取りしている不届き者が居る」 「縁を、横取り……って、そんなのできるの?」 「結ばれたおみくじを、解いて持ち去っている輩がいるのだ」 「……そんなことするメリットが見えないけど」 「依頼はその犯人を見付けて欲しいということだ」  意外にもきちんとした調査依頼だった。神社で結ばれたおみくじを解いている何者かを見付けること。それが依頼らしい。 「見付けた後は、どうするの?」 「私に知らせてくれればいい。お灸を据えるのは私の役目だ。無用な手出しはするな」 「かんたろ、どう思う?」     
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