消えたおみくじ

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「いいんじゃないかな。調査依頼としては真っ当だ。オレたちは『仕事人』じゃないし、不埒な輩を退治するようなことはしない。あくまで犯人が誰かを調査するだけ」 「そうね。では、元三大師の神宮寺さんの依頼、引き受けます」 「よろしく頼む」  清は厳かな態度で頷いて、立ち上がると、衾を開けて立ち去った。あとに残された二人は、早速問題の発生している神社に向かおうと支度を整え出かけるのだが……。  あやかしインベスティゲーションを出て廊下を進むと、途中に二階への階段がある。  月は、ふと気になって階段を見上げながら乾太郎に訊ねてみた。 「ねえ、かんたろ。このマヨヒガの上ってなにがあるの? 一階と同じでいろんなあやかしが暮らしてたり、店出したりしてるの?」  何気ない質問で深い意味はなかった。もしかしたら、二階には面白い店があったりするのかなと考えたりした程度だ。  だが、その質問に、乾太郎はこれまで見たこともないような顔をして、月の手を押さえつけて壁際に追い詰めた。 「行くんじゃない」 「……な、なに、どうしたの……」  鬼気迫る表情で、乾太郎は月を押さえつけていた。その力の強さに、月は初めて、ちょっぴりではあるが、乾太郎を怖いと思った。手首を握られて、壁に押し付けられ、乾太郎の顔は目と鼻の先にある。その表情は、優しいいつもの彼とは違う、威圧感があった。     
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