消えたおみくじ

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 大きな旅館。目算では五階か、六階くらいまでありそうだ。外から見るだけでは、その上階がどうなっているのかは、まるで分からなかった。  あまり気にしていて、乾太郎に注意されたくもなかったので、月はまた前を向き直り、砂利道を進んで赤い橋を渡る。  門番みたいに立っている阿吽の二人に会釈してから、あやかし世界の入口になっているエレベーターに乗り込むと、池袋の街に出る。  目的の神社は池袋御嶽神社(いけぶくろみたけじんじゃ)だ。池袋のシンボルになっているフクロウを象った石像や根付が多く、可愛らしいことから女性の参拝者が多い。  池袋駅からも歩いて十分ちょっとでたどり着けるし、初詣の時は混雑していることが多い。  現在は四月、そこまで混雑はしていないだろうが、人の姿はちらほらと確認できる。 「この神社はタケミカヅチとかヤマトタケルとか祀ってる。キララちゃんでも流石に名前くらい聞いたことあるんじゃない?」 「私でもってなんだよー。まぁ……名前くらいなら分かるよ。日本神話の神様だよね」 「そう。とても強い神だ」 「乾太郎よりも?」 「そうだよー。オレなんかとは比べ物にならない大神だ」 「ふうん。じゃあ、ここで貧乏神を払ってくださいってお願いしたら、叶うかな~?」 「か、勘弁してくれよ。キララちゃん」 「冗談だよ。あ、狛犬」     
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