消えたおみくじ

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 しかし、失物、転居、商売が、絶望的に終わっていた。  お金を失くし、引っ越し先は宜しくなく、お金を稼ぐことは難しい、まさに貧乏神の影響がそのまま書き込まれているようだった。 「……まぁ、オレが憑いてるからね」  同情するような声色で言った乾太郎に、じろりと睨む月だった。  あとはこのおみくじをどこかに結べばいいわけだが、きょろきょろと境内を見回すと、おみくじを結ぶために用意された結び場があった。木に結ぶと枝が折れてしまうためだろう。細い糸が巡らせてあって、そこに結ぶように設営されている。  月がそこまで行くと、実際にいくつかおみくじが結ばれているのが目に留まる。 「結ばれてるね。全部解かれてるってわけじゃないのかな?」 「もしかすると、解かれているおみくじには、規則性があったりするのかもしれないな」 「規則性……か。例えば、大吉だけ持っていく、とかかな」 「うん……でも、ちらちら覗けるおみくじを見ると、大吉も末吉も、凶も結ばれてるね」 「動機が分かれば、犯人をプロファイリングできるのにね」 「そんなこと、できるのかい?」 「いや……ごめん、カッコつけて言っただけ」  犯人捜しなんてやっていると、ついつい名探偵マンガやドラマの真似事じみたことを言ってみたくなる。     
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