消えたおみくじ

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 そんな月に冷静に乾太郎が突っ込むと、妙に恥ずかしい気持ちが膨らんだので、月は頬を染めてうつむいた。 「どうする? また現行犯を狙って待ち伏せにするかい?」 「……流石に一日中ここで張り込みするわけにはいかないし、犯人が何時やってくるかもわからないからな~」  どうしようかと悩み腕組みをする月を、見つめている乾太郎は、代案を出すわけでもなく、微笑みを浮かべて月を見つめるばかりだ。 「なに、じろじろ見ないで」 「ごめん。つい」 「ついって……」  つい、人の顔をまじまじと見つめることなんてあるだろうか。 「ところで、それは結ばないの?」 「あ、私のおみくじ? ……そうだね、結ぼうか」  広げていたおみくじを細く畳み、結びやすい形に整えて、ヒモに結びつけようとした。  括りつけられるヒモは三本あり、段になっていて、結びやすいところに括りつけることが可能だ。 「こういうのって、なんか、一番上のほうが御利益ある気がするのよね」 「なんでー?」 「……神様って、天国とか、天界とか雲の上にいるってイメージだから、上のほうが良いって……思い込みだったけど」  ……けど、マヨヒガは地下にあると知ってしまって、上に結ぶ事のご利益の信ぴょう性はなくなってしまったように思う。     
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