消えたおみくじ

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「それでかな、一番下の段はあんまりおみくじ、結われていないね」 「……そうだね。下の段って屈まないと結べないし、ちょっと位置的に結び辛いもん」  乾太郎の言う通り、一番下の段を見ると、ほとんどおみくじは結われていない。上の方はかなりの数が結われている。少しだけ一番下の段が寂しげに映った。  月は、色々と考えて、下の段に結ぶ事にした。膝を曲げて少し腰を落とさないと結べない位置は、ちょっと面倒ではあったが、なんとか結ぶ事ができた。 「これで、神様との御縁ができた」 「あやかしが『縁』を大事にしているって教えてもらったから、なんとなくわかるけど、これって要するに、あの元三大師の富になるのね」 「そうだね。人との関わり、縁を糧にしている神様……、信仰心と呼んだ方がしっくりくるかもしれないけど、それも結局神様に近づきたいという気持ち。『縁』を結びたいと願う人の心だからね」  乾太郎の語るあやかしの仕組みは、聞いていてなるほどなぁと頷いてしまうことが多い。  大きな神社に祀られている神様が、強大な力を持っているのも、それだけ参拝客が来たリ、今も根強い信仰が続けられているためなのだろう。     
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