消えたおみくじ

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「そうなると……貧乏神の乾太郎なんかは全然『縁』がないんじゃない? 人間は大抵、貧乏神とは縁を切りたいって思うもん」 「……痛いとこ突くねぇ、キララちゃん」  はぁ、と眉を八の字に歪め、重苦しい溜息を吐き出した乾太郎に、月は「おや」と思った。  軽口で言ったつもりだったが、割と図星で気にしているらしい。 「ごめん、考えナシに言っちゃったけど、気にしてた?」 「いや、いいよ。キララちゃんのそういうズバズバ言うところ、好きだから」 「……結構、かんたろもズケズケ言ってるよ。お相子だ」 「あやかしはみんな、『御縁』を大切にする。縁を切りたいと思われるのは、本当に哀しいことでさ」  乾太郎が調子を取り戻したような口調で、きさくに語ったが、その表情はまだどこか物悲しそうに見えた。  以前、月に部屋を出ていくことを進めていた時の、彼の瞳の色に似ていると思った。 「オレもだけど、疫病神の蔵馬も、結構それで打ちひしがれてたりするからさ。キララちゃんと仲良くなれるのは……、その……すげえ、嬉しいんだ」  照れながら、本音を語ったらしい乾太郎のいじらしい姿に、月はどう反応していいか、困惑した。と、いうか、こちらも恥ずかしくなった。     
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