あうん の こきゅう

2/11
前へ
/314ページ
次へ
「食事に関しては、心配しなくていいからね、キララちゃん」 「複雑な気持ちだな、なんか……」 「えぇ~、喜んでくれよ。オレ、このくらいしか君のためにできることないし」 「殊勝なこと言うなよ、もー」  いっそ、乾太郎がどうしようもなく悪人気質だったら、貧乏神に対して厳しいこともやってのけるのに、どうにもこの男、ものすごく優しい。気が利くし、――顔も良いし。  これでは神社の神様に、貧乏神をなんとかしてくれなんて、お祈りはできない。  ブブブブ、ブブブブ。 「あれ、着信……和泉さんから!?」  スマホが振動音を立てていたので、画面を覗くと、そこにはあの疫病神の和泉蔵馬の番号が表示されていた。  何の電話なのか分からないが、意外な相手に、月は通話ボタンをタップする。 「もしもし――」 「こんばんは、月さん。良かったら今からお邪魔してもいいかな?」 「えっ? 今から?? ここに来るの?」  ピンポーン、とインターホンが鳴る。まさか、と入り口を開くと、そこには蔵馬がスーツ姿で立っていた。しかも手に花束を持って。 「月さん、明日から大学生だそうですね」 「だ、誰から聞いたの!?」 「蔵馬! お前、何しに来た!」     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加