あうん の こきゅう

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「ああ! ありがとう、月さん! カデノコ、主がこういうのだから、観念してもてなすんだな」 「お前には、カップ焼きそばで十分だ」  ビリビリと湯切り口も無視して蓋を剥がす乾太郎は、拗ねたように唇を尖らせていた。  賑やかな夕食が終わり、食事の後に三人で談笑をしていた。  美味しいステーキを楽しんだ月は上機嫌だったし、湯切りに失敗しているカップ焼きそばを食べた蔵馬も、月と一緒に楽しく笑っていた。乾太郎もなんだかんだで蔵馬と漫才みたいなやり取りをしながら会話を弾ませていた。 「蔵馬さん、今日はもう厄集めは終わったんですか?」 「うん、また明日の朝街を歩き回って不幸集めを頑張るよ。と言うか、月さん」 「はい?」 「敬語で話さなくていい。もっと気さくに、乾太郎のように対話してくれてかまわない」 「あ、いや……うん。分かった。ありがと。そうする」  と、隣で聞いていた乾太郎が、不機嫌そうに眉を吊り上げて膨らんだ。 「おい蔵馬、キララちゃんはオレのだって言ったよな」 「独占はよくない。僕だって、月さんともっと、親密になりたい」  月を間にして、二人は言い合いを始めた。まるで昔読んだ大岡裁きの子争いの気分だった。 「じゃあ、どっちがキララちゃんを悦ばせられるかで勝負しようぜ」 「受けてたとう」     
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