あうん の こきゅう

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「まてまて、本人無視して進行するな」  どうも、大岡裁きではなく、北風と太陽の流れになりそうだったので、月は付き合っていられずに立ち上がった。 「私、お風呂行く。明日は入学式だし、色々あるんだから、今日はもう解散!」 「そ、そんな……月さん……」 「やーい、帰れ帰れー」 「かんたろも、食器洗いをして寝なさい!」 「はい……」  大きな子供を相手にしているようで、月はどっと疲れがやってきた。  結局二人は渋々と言われた通りに動き出し、蔵馬は帰り、乾太郎も食器を洗い始めた。  やれやれと、肩を竦めて、月は温かい湯船でその疲労感を洗い出すのだった。  気持ちのいい湯船の中、一人暮らしの寂しさなんて微塵も感じさせない二人のあやかしに、こっそりと感謝を述べて――。  ――翌日。  スーツを着込んだ月は、入学式に備えて早めに支度を整えた。朝は乾太郎がトーストとベーコンエッグを用意してくれた。今日はついてこないでねと釘を刺した。大学の入学式に乾太郎を連れてはいるのは流石にどうかと思ったからだ。  月の学部は最近創設されたばかりの『メディア学部』と呼ばれる情報メディアの研究や知識を得るための学部だ。     
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