あうん の こきゅう

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 月は今、時代が大きく動いているのを実感していた。目まぐるしく切り替わる現代社会の情報メディアは、未だ未開拓な世界で、チャレンジ精神が刺激されたのだ。  昔から挑戦することや、見知らぬものに触れていく好奇心が旺盛だった月は、この新進気鋭の学部で自分の力を大きく伸ばしていきたいと思ったのだ。  そんな性格だったからだろう。こんないわくつきの物件でも契約してみようと考えたのは。  もし、何か変なことがあればネタになると考えていたが、自分が想像していた斜め上の更に果ての出来事に巻き込まれることになった。  それでも、悲観はしていない。  月は、あやかしの世界の関わりもまた、自分の経験になると考えているからだ。それに、乾太郎は言っていた。日本国は秘密裡にあやかしの存在を認めているのだとか。  だとしたら――この知識は必ず役立つ日がくるだろう。全てが悪いことに転がるわけではない。  唯一、金銭面だけは、どうしようもないのだが……。  入学式は滞りなく終わった。午前中から昼過ぎまではまだ大きなトラブルに巻き込まれるわけでもなく、平穏無事に過ごせたことにほっと胸をなでおろしていた。  入学式が終わると共に、学部の説明会を回ることになり、その日はあれよあれよという間に夕方が迫っていた。     
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