あうん の こきゅう

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 そのまま帰る事もできたが、月にはもう一つの抱えている問題――『あやかしインベスティゲーション』の依頼が残っていた。  元三大師の依頼であるおみくじの行方を調査しなくてはならない。  月は、スーツ姿のその足で、神社に向かうとおみくじが括りつけられているところを見に行ってみた。  乾太郎を呼ぼうかと思ったが、ただおみくじの様子を見るだけの話だし、必要ないかと単身神社にやってきた。  境内を進み、狛犬を過ぎ去っておみくじを見に行くと――。 「…………?」  違和感に気が付いた。  沢山ある結ばれたおみくじ。三つのヒモの一番下。  昨日、そこに結び付けた月のおみくじだけ、消え失せていた。 「なくなってる……。私のおみくじが――解かれてる」  月は、まず、周囲を確認したがおみくじを取っていったような犯人は見付けられない。人の姿はまばらにあるし、所詮畳んでしまえば、小さな紙くずと変わらないおみくじは、隠そうと思えばいくらでも隠して持ち出せる。  社務所に、おみくじを解いている人物を見ていないかと聞いてみたが、眼鏡をかけたおばさんは、ぼんやりとして眠たそうに、分からないと回答した。  まさか、態々おみくじを解いて持っていくような人物がいるなんて考えもしないだろう。なんのメリットもないからだ。     
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