第2話 影狩りとの共同戦線

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「そう。俺は素体No.AQ-002、『アクアリウス』の元となった人間だ」 そうだ、ナンバーが付けられているならオレと同じく元となった人間がいるはずだ。そして同じく、軍事プログラムとなったデータがあるはずだ。 むしろ何故『12あるデータ』と言われた時点で気が付かなかった。影狩りはヴィワーズ社の関係者でテストデータとしては最適な存在だ。 新月の空の色から日の光を浴びた深海の色へ、姿を変えたディストピアを呆然と見つめる。影狩りのため息すら、限界を超えた頭では処理できない。 「言っただろ、『そのデータは12あるデータの一つでしかない』と。その内のいくつかはまだ把握できていないが、俺が確認しただけでは少なくとも7人がこの技術の被験者となっている」 多いのか少ないのか、『被験者』というキーワード、ごちゃごちゃになった頭にまた情報が追加される。もう勘弁してくれと、現実を遮断するように目を瞑り耳を塞ぐ。 揺らいだ視界も延々と続く耳鳴りも刺すような痛みも、そのすべてがオレを正常な思考に戻してくれない。 「馬鹿げた話だろうな。大人の身勝手で始まる荒事に、元とはいえ子供を使用するなんか。 何より、完成するのを心待ちにしてた子供の心を砕いてまでやることが理解できない」 カランがそれを知ったのはいつだったのだろう。自分が戦争に使われる兵器の元となり、自身の身内に騙されていたとなれば一因であるシャドウを恨む理由にもなる。 何年影狩りを続けたのかは分からないが、今よりもっと幼い頃に真実を知ってしまったのならそのショックは計り知れない。きっとカランは理解なんて求めてないだろうけれど。 「それが、『影狩り』がシャドウを嫌う理由なの? だったら何故嫌うものを使ってまで、消そうとするんだ。それは逆にお前の首を絞めるだけじゃないの?」 知りたいと思うのにカランの本心が分からない。 『影狩り』としての彼と、『カラン』としての彼。1日2日で分かるはずもないけど、そのどちらも今は鈍く霞んでどうにも掴めそうにない。 「毒を持って毒を制する、このデータに対抗出来るのは同じデータしかないのさ。 ところで」 また『影狩り』が笑う。その笑顔、ホントに嫌いだ。 「まだ勝負は終わっていないぞ」 その言葉を合図として中断されていたバトルが続行された。 .
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