第3話 データの行方と謎

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店員に許可を取り、店の隅にある専用の機器に読み込ませてデータの確認をしてみる。 だが、そこにはデータとも言えない文字列が延々と続いているだけだった。 「…なにこれぐっちゃぐちゃ」 「そうなんですよぉ~。 これアーチャースタイルに特化されたデータらしいので、ぼくの『イグニス』には規格が合わないからと確認もせずに放置していたのですが、先ほどアキラさんからご連絡を頂いて中身を確認したらこんな事に…」 『すみませ~ん』と泣くリュウジを宥めつつ文字列を眺める。これに近いものを最近見た、あの不可解な招待状だ。となるとこれもタルタロスデータの一つなのだろう。 しかしこれでは個別スタイルにすらならない。使えるように組み替えようにも、元の形が分からなければ手の出しようがない。 「これ不良品なんじゃ」 「おい、お前のSPCに読み込ませてみろ」 どうすることも出来ないと悩んでいると後ろから見ていたカランから声が掛かる。 「え?でもこれしっちゃかめっちゃかだよ?」 「だからだ」 カランの意図が分からず首を捻りながらもリュウジから承諾を得て、言うとおりに読み込ませてみた。するとウィンドウが表れて支離滅裂だったデータが形を変えて姿を表す。 ほんの一瞬の後にはアーチャースタイルのデータが完成していた。 「データが再構築された?」 ウィンドウを操作して再度中身を確認する。カランが使用する『アクアリウス』と同じくアーチャースタイルではあるが、向こうは火力を最大限まで引き上げ陽動を主力とした形に対し、こちらは威力、射程、弾速をバランスよく整えた機動スナイパーに特化されている。まさに王道の狙撃手だ。 関係ないが火力を底上げしている『アクアリウス』にテクニックを重点に置いているディストピアは相性が悪いはずなのに、あそこまでクリティカルを連発出来るとなるとカランは本当に強い、いや上手いということか。 「おそらく完成していたデータの情報をデタラメに入れ換えて一定の条件を満たした時にだけ元の形に戻るよう設定していたんだろう。ラグナロクはプロテクトでもあり、タルタロスデータのキーでもあるということだ」 カランの腕がウィンドウに伸びて操作を始める。基本情報の名前の欄には『GE-006』と味気ない名前が記されていた。 「見つけたぞ、『ジェミニ』」 .
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