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『影狩り』の顔を見せたカランから『ジェミニ』を奪いとる。収集に変更するとは言っていたがいつ気が変わるか分からない。
オレの行動にカランは眉を潜めたがすぐに元に戻り、席へ座った。
「カラン、これどうする?」
「今はどうもしない。下手に消去してラグナロクのロックを解除出来なくなると困るからな」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろす。よかった。
これはリュウジのデータだ、例え影狩りでも戦いもせずにデータを奪うということはないらしい。…リュウジ?まずい!!
「あのぉ……」
気が付いてももう遅い。知られてしまった。
「先ほどから話されている『タルタロスデータ』や『ラグナロク』とは何のことでしょうか?それにあのデータは何ですか?製品ナンバーもないデータなのに、あの完成度。限定データなんて言うものではないですよね?
もしかして、昨日依頼されたメールの送り主に何か関連することですか?」
首を傾げながら問い掛けるリュウジに目眩がする。
リュウジは聡い。昨日はオレがキツく言っておいたので詮索はしなかったが、この状況で下手に隠してしまえば一人で調べ尽くしてしまうかもしれない。それだけならまだいい。問題はそれが原因でヴィワーズ社に目を付けられないかという点だ。
カランを連れ戻すために見ず知らずのオレが居ても襲撃してきた相手だ。手荒なマネをしてリュウジが連れ去られでもしたら…。
そこまで考えてハッとする。
『タルタロスデータ』も『ラグナロク』も、言葉に出したのはカランだ。
「カラン、もしかして巻き込んだ?」
「お前見た目のわりに頭がいいな。だが油断しすぎだ。
お前と手を組むとなった以上、協力者は何人居ても変わらない。不知火龍人ほどの実力者なら協力者として引き込んでも足手まといにならないだろうしな。せいぜい利用させてもらう」
いい手駒が手に入ったと言わんばかりに機嫌を良くするカラン。
よく考えなくても予想出来ただろうに。あれだけ協力を嫌っていたカランが追い返さなかった時点でどうして思い付かなかった。
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