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それに影法師の解除キーを持っているのは、例えれば銃や刀を持っていることに近い。実際に以前は切り替えのみだったが、『現実に被害がある』ということで現在の解除キーが開発されたので、大会以外でRAVモードは見掛けることはない。
「な、なんでこんな物持っているんですか!!
下手したら捕まりますよ!!」
「関係者だからな。護身用目的で持たされたものをコピーしたから違法じゃない。見付かっても厳重注意ぐらいだ。
それに頷いた以上お前に拒否権はない。期待しているぞ」
そうだったのか。てっきり勝手に持ち出した物かと思っていた。というかやっぱり逃がす気なんてないじゃないか。
「次はお前の番だ。悪いが、嘘偽りなく話してもらう」
胡座をかいたカランが数秒の瞑目の後、真剣な顔で口を開く。
高槻博士…おじさんの事について、そしてエスペランサに関する事だ。嘘も偽りも、張りぼても虚勢も必要ない。
「高槻博士は行方不明になる前に何か変わったところはなかったか?」
最初にその質問が来たか。確かに誘拐でもない限りなんの異変もなく行方不明になる人なんていない。
おじさんにその意志があったならどこかに異変が生じるはずだが、生憎これと言った行動は記憶に無い。
「心当たりはないけど、しいていうならおじいちゃんの墓参りぐらいかな」
「墓参り?」
「そう。おじさん、滅多におじいちゃんの墓参りに行かないんだけど、その日はオレを誘って行ったんだ。その数日後に連絡が取れなくなった」
おじさんと祖父は折り合いが悪く、祖父が亡くなる直前まで顔を見せなかったそうだ。ちなみに祖父も似たような研究員だったらしいが詳しく聞いたことはない。
「高槻博士の父親か…。
お前、何故最初の被験者に選ばれたか心当たりは?」
「それこそ知らないよ。おじさんが研究の責任者だったからじゃないか?……あれ、それならなんでカランの方に最初から依頼が行かなかった…」
「黙れ」
その一言で、体にビリッと痺れる感覚が流れる。どうやら地雷を踏んだみたいだ。
その声を向けられた訳ではないリュウジですらをも怯えさせる怒気を含んだ声と目に、思わず視線を反らす。崩しかけていた正座を正し、ジリジリと焼けるような空気は素知らぬフリをして質問の続きを促した。
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