第1話 日常から非日常へ

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「ここ、データショップ?」 位置情報を頼りに目的地に着けばそこはシャドウのデータショップ。奥に入り組んでいて分かりにくいが、別に怪しくはない。 そっと扉を開いて中の様子を伺う。年齢層は高めだが穴場的な場所なら珍しくない。むしろこういう場所はオリジナルデータをカスタム出来る機器が揃っているので、大人が出入りしやすいのだ。 一度扉を閉めて、深呼吸。気合いを入れて入り直す。 扉のベルが大きく聞こえた。 「…いらっしゃい」 「こ、こんにちはっ」 無愛想な店員、小さいながらも品揃えが豊富な棚、平日だからかまばらな客。ぐるっと中を回ってみたがおかしな所はない。 いっそ店員に聞いてみようか、何か知っているかもしれない。 口を開きかけた時、またメールが届く音がした。確認すれば同じアドレスから文字の羅列と『店員に見せろ』という不可解な内容が記されている。 タイミング良く届いたメールに心臓が鼓動を速める。監視されてるのか、やっぱり一人で来たのは間違いだったのか。思考がマイナス方向に向かうのを頭を振って追い払う。 今さら悔やんでももう遅い。ここまで来たのなら最後まで突き詰めてやる。 メールの指示通り店員に見せると、一瞬眉をひそめて訝しげに見られた。その表情はすぐに無表情に変わり店の奥へと連れていかれる。 扉の先はゾッとするほどの熱気に満ちていた。 薄暗い空間に敷き詰められた人間、真ん中のフィールドだけが煌々とライトで照らされている。 空気が薄いのかそれとも恐怖からなのかうまく息が吸えず苦しい。 乱暴な言葉が飛び交い、醜い雄叫びとつんざくような嘆きが一瞬の隙間すらなく耳を刺す。 「ここは…?」 「アンダーフィールド、シャドウでの賭け事が行われる場」 店員はそれだけを伝えると、さっさと表へ行ってしまった。 どうやら店員はただの案内人だったみたいだ。 「アンダーフィールド…。 アングラ大会みたいなものか……」 小さな町の大会ならともかく、ここまで大規模な大会なら公式化してもおかしくない。けれどそれが無いという事なら、賭け事が関係しているのだろう。非公認といえど、子供の遊びに対して大人は悪どいことを考える。 フラフラと歩いていると背中に衝撃が。どうやら人にぶつかったらしい。 .
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