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「っと、す、すいません」
謝ろうとして、振り向く。
黒に染まる視界。すぐにフードだと気付くが、同じぐらいの身長にフードの隙間から見えた黒い眼がまた視界を黒く染めた。突き刺さりそうな冷たい視線にギクリと体が強張る。
棒立ちになったオレに興味を示す様子もなく、小さな体が横をすり抜ける。
「おいボウズ、気ぃつけろよ。そいつ『影狩り』だぞ」
その背中を見つめていると声がかかる。常連客のような男が先ほどの人物の情報をくれた。
『影狩り』。数時間前に聞いた噂だ。
「『影狩り』……。あいつが?オレと同じぐらいなのに…」
「ボウズ、ここにいる奴らは見た目で判断したら痛い目見るぞ。
なんなら今から見ておけばいい。影狩りのバトルを」
アナウンスが入る。
次のバトルは影狩りが登場するみたいだ。
観客が一気に沸き上がる。
影狩りの名前が出た途端、より一層ひどくなった罵声と空気。よほど影狩りは嫌われているみたいだ。
そんな周囲をものともせず、優雅な足取りで中心のフィールドに降り立つ。
どれだけ見ても強そうには見えない。
小さな体躯、優雅な足取り、しゃんと伸びた姿勢。テレビで見る子役だと言われても違和感がない。
けれどそれら全てを恐怖に塗り替えるあの黒い眼が頭の中にちらつく。あの眼で見られた時、心臓に氷柱が刺さったように恐怖で体の体温が下がった。
まるで、何かを恨んでいるような……。
「(あいつ…何で影狩りなんか……)」
恐怖と疑問が渦巻く中、バトル開始の合図が放たれた。
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