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期待していた病院は最悪だった。電車ではまた無理解から差別を受けた。だけど、そんな悲しみを吹き飛ばしてくれるような人に出会えた。円からもらったLINEのIDを大事にアプリにしまい、幸せに微笑みながら縁が家の玄関を開けると、仁王立ちで母が失望と怒りの入り混じった顔で待ち構えていた。
『縁!今日は体調不良で会社早退したって本当なの??』
母は怒っていても、大抵ゆっくりしたスピードで、表情や口を見せながら会話をしてくれる。内容がごくシンプルなものであれば縁はある程度、口の形や話の内容を読めるのだ。が、その気遣いとは裏腹に、娘の体調不良を第一に心配する態度は見受けられない。
『うん』
縁はぶすっとして頷いた。この人はいつもそうだ。縁の気持ちなど考えない。ただ世間的に見て、少しでも平均とズレていないか、他人より多く迷惑をかけていないか、そればかりを気にする。
聴者並みになれ。
そんな母の理想を叶えるため、どれだけ無茶苦茶な努力を強いられ、地を這うような苦しみを味わってきたか分からない。母親は憮然とした娘の態度にいらついた様子で、手に持ったホワイトボードに文字を書きなぐり、縁の眼前に突き出した。
『う
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