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んじゃないわよ!さっき会社から電話があって、縁さんお腹痛いって言ってましたけど家で悪い物食べたからですよね?縁さんいつも自前のお弁当だし、うちで提供してる社内弁当が原因じゃないですよね?って言われてびっくりしたわ!』
縁はせっかく円が散らしてくれていた暗い澱が、再び心の中に溜まっていくのを感じた。会社の人間もまた、縁の体調不良の心配なんかより、それが業務上の災害にならないかどうかが大事なのだ。
縁の母は、縁の手を強引に引いてキッチンに連行していった。脱ぐのが追いつかず、無理やり主人の足から外されたパンプスが玄関に散らばる。ダイニングテーブルには角ばった父の文字が書かれたノートが出されており、その前に父親が腕を組んで座っている。
『上司の方が、せっかく病院まで送って行くと言ってくださったのに、1人で行ったそうじゃないか。せっかく申し出たのに、頑なに嫌そうに何度も断られたから、相手方は気分を害したようだったぞ。お前はどうして、そういう人の心の機微に気づけないんだ。子どもの頃から注意しているのに、まったく直っていない!』
縁は瞬間的に、食器棚に陳列されているコップを全部割って暴れてやりたく
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