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は縁の頑なな態度に呆れ果てた親の苦渋の措置であって、縁の心を思ってのことではない。
『私聞いた、話、うわさ、上司、女の人、みんな、嫌。 みんな、体、触る、彼氏はいるのか』
だから縁は、殺した怒りを胸の内に押し込め、最初の尋問の弁明だけ、父親が納得するであろう言葉を選びながらノートに書いた。自分だけではなく、みんなが被害に遭っている、と嘘を入れたのは、自分だけターゲットにされていて、しかもその理由が、自分ではどうしようもないハンディキャップのせいだという惨めな事実を、自分で認めるのが辛すぎたからだ。自分の日本語では分かってもらえないこともあるので、スーツを着た男に体を触られて嫌がる女性職員のイラストを添える。縁はその絵を描きながら、上司にされてきた数々のセクハラが頭に浮かんできて吐きそうになった。こんなこと、異性の親に話さなきゃいけないこと自体、鳥肌が立つほど嫌だ。
『最近の女はちょっと触ったり、彼氏がいるか聞くだけでセクハラだと騒ぐ。お前たちの自意識過剰じゃないのか?』
父が書いた内容に、流石に母が何やら言いながら諭した。父は納得できないという表情を崩さなかったが。母は再びペンを取り
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