374人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
ある意味、針のむしろかもしれないが……
それでも楽しみにしているというアルヌールの瞳を見ると苦笑で許せる。もう散々ネタにはされたし、否定もしないからいいだろう。
「悪いな。それでは、ジョルジュに案内を……」
アルヌールがそう切り出した時、突如謁見の間の扉が勢いよく開いた。
そこに立っていたのは一人の少年だった。年は二十歳になるかならないか。肩までの銀髪に、アーモンド型の緑色の瞳を厳しくしかめている。黙っていれば綺麗系なのだろうが、溢れる気配はとても刺々しいものだった。
少年は騎士達を一瞥して、イライラした口調で声を上げた。
「王の御前だぞ、騎士共! 膝をついて最上の礼をするのが礼儀というものだ。そんな事も帝国の者は知らないのか!」
「フェオドール!」
少し高い少年の声を諫めるように、アルヌールは声を上げる。それに、フェオドールと言われた少年はビクリと一つ肩を震わせる。強情に唇が真一文字に引かれた。
「俺が堅苦しいのはなしにして欲しいと頼んだんだ」
「だが!」
「国賓の前で無礼なのはお前の方だ。まだ謁見時間は過ぎていない、控えろ!」
最初のコメントを投稿しよう!