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堂々とした声は確かに王の声だ。カーライルも国民に呼びかける時、他に命じる時はこのような声になる。上に立つ者が持つ、絶対的な声音なのだ。
引き結んだ口がほんの僅か震え、肩も震えている。刺々しい空気はより尖り、緑色の瞳には憎らしさまで見えた。
「兄上、私はまだ反対だ! 他国の者を奥院に招くなど!」
「くどい、その話は終わっている。彼らは身分も国も経歴も明らかな者達だ」
「! 何があっても知りませんからね!」
言い捨てて踵を返し、乱暴に退室していく少年を一同が呆然と見送る。そしてアルヌールは一つ溜息をついた。
「すまない、騒がせてしまった」
「あぁ、いいえ」
「弟はどうにも俺のやり方が気に入らないようでな。昔はこうではなかったのだが、最近はこんなんだ。不快な思いをさせて申し訳ない」
初めて心労の見える顔をしたアルヌールが、誤魔化すように笑う。そしてジョルジュに奥院へ案内するようにと命じて下がっていった。
奥院は王やその家族、側近、そして親しい客人を招く生活の場だ。
そこに案内され、話し合いに使ってくれと少し広い談話室まであてがってもらい、今はそこでお茶を頂いている。
「それにしても、凄い剣幕だったね」
思いだしたようにレイバンが口にし、それに全員が何とも言えない顔で頷く。ジョルジュは溜息をつき、頭が痛いと首を振った。
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