国境の町ヒレン

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 なんだか心苦しく伝えたランバートに対し、案内の兵士はにこやかに微笑んで一礼して出て行く。  これまでと明らかに違う扱いに何となくムズムズと、全員が顔を見合わせて笑った。  だが実際の所はかなり有り難い。東の森でも凍死する様な寒さはなかったが、それでも体は冷えていたのだろう。洞穴式の隠れ家を点々としていたのだから、仕方がない。  今、暖炉の温かさを全身に受けて心地よく体が温もるのを感じている。どことなく全員が、ほっとしたような顔をしていた。  そこに、勢いよくドアが開いて一人の男が姿を現した。正直、その大きすぎる開閉音に気の抜けた騎士達がビクリ! としたくらいだった。  男は年の頃三十代後半という様子で、きっちりとした騎士の服の上からでも逞しい肉体が分かる感じがした。背はそれほど高くはないのだが、横幅があり、そのほとんどが筋肉だと分かる盛り上がりをしている。  髪は刈り上げた銀髪がツンツンとしていて、輪郭は角張、鋭い青い瞳は興味深げに全員を見回し、顎には無精ひげが生えていた。 「おう、待たせてすまなかった。ちと町の見回りをしてたもんでおくれたわい。がっはっはっはっはっ」 「……はぁ」  色んな意味で、豪快そうだった。     
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