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暗い影
アルヌールの怪我は幸い命に関わるものではなく、毒などもなかった。
だが、深夜の騒動はそれなりに城を緊張させている。その一部は、客人である騎士団への疑いも含んでいた。
「騒がせて悪いな、ランバート」
「いいえ、致し方のない状況です。お加減はいかがでしょうか?」
翌日の午前中、落ち着いたということで招かれたランバートと対するアルヌールはベッドに上半身を起こした状態で、刺された左肩は下がっていた。
「問題無い。と、格好をつけたいんだがな。ものすごく痛い! あと痺れる」
「ご無理をなさいませんように」
「お前、淡々としているな……」
「それだけ元気であれば回復も早いかと。あと、油断すると貴方は手が早そうなので」
「ちっ、美人だが油断ならんな。まぁ、半分は冗談だ。この痛みでは流石に手を出す気も失せる。アレも勃ちはしない」
「養生なさってください」
ニッコリと返したランバートだが、内心ではどう扱っていいものか。相手が他国の王でなければもっと雑な扱いをするのだが。
「妻には心配をかけるし、息子は泣くしで朝から散々だ。俺は動き回ってなければ死んでしまうぞ」
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