暗い影

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「我が国では王に子があったとしても、その子が十歳に満たない場合は継承権を持たない。王に他の直系親族がない場合は特例が認められるが、そうでなければ継承権は血の近い所からだ」 「つまり、現在五歳のリシャール王子には継承権がなく、第一継承権は弟のフェオドール様だと?」 「そうなる。俺に他の兄弟はないからな。リシャールが十歳になれば継承権は一位だが、成人する十七歳までは玉座に座れない。短いかもしれないが、それまではフェオドールが王だ」  なかなか珍しいが、国が正常に運営されていくための仕組みなのだろう。確かに幼い王を玉座にあげての傀儡政治などはよく聞く。それをさせない為なのだろう。 「フェオドールの側近に、ニコラという男がいる。こいつが厄介でな」 「離そうとはしなかったのですか?」 「したさ。だがフェオドールが言う事を聞かない。あいつはフェオドールに甘言ばかりを囁き、俺がフェオドールを下に見ていると言い続けた。そのせいか、あいつはどんどん俺から離れて今はこんなだ。何度か無理に離したが、そうすると手がつけられなくてな」  態度は尊大だったが、兄であるアルヌールを慕っていないわけじゃない。叱られる時、ビクリと肩が震え傷ついた顔をしていた。襲われて倒れた時、著しく顔色が悪く目に見えて震えていた。     
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