暗い影

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 態度と心が一致していないが、反抗期とはそういうものだろう。思ってもみない事を言ったり行ったりするものだ。  彼はきっとなにも知らない。自分が黒い陰謀に巻き込まれている事も理解できないまま、周囲に引きずられて落ちていくのを待つばかりだ。 「……陛下、宜しければ今回の件、我々にもお手伝いさせていただけませんか?」 「ん?」  ランバートの申し出に、アルヌールは顔を上げる。驚いたような表情に、この人もこんな顔をするかと笑みが浮かんだ。 「誰が味方で、誰が敵か。それもはっきりとしない状況だと頼れるのはジョルジュ将軍なのでしょうが、彼は目立つ」 「潜むということができないからな、あれは。だが、それを申し出てお前達に得はないぞ? 疑われている以上、俺は堂々とお前達にこの一件を任せる事はできない。気取られれば立場を悪くするが」  アルヌールの懸念は理解している。そもそも他国の騒動に首を突っ込むのは得策ではない。  だが相手は狡猾そうだ。そしてこれが解決しなければこちらも動けない。それは困る。 「気取られてつるし上げられた時には知らぬ存ぜぬで結構です。ただ、我等はこれから敵国に潜伏し、職務を行う特別部隊。潜む事、探る事にはそれなりに自信があります。動けなくなるのは困りますから、できるだけ早い解決を望みます」 「……なるほど」     
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