暗い影

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「そうですわ! あれはきっと、フェオドール様の」 「あぁ、こら!」  名前が出て来た。そして慌てて止めた。どうやら使用人達の間まで、二人の不仲は有名らしい。 「昨日絡んできた、王弟殿下?」 「……昔はこんな事はなかったのですが……陛下は良くも悪くも型破りな王様ですし、フェオドール様は旧体制の人達に囲まれていて、いつしか合わなくなってしまって」 「本当に、昔は兄王様が大好きな素直ないい子だったんですよ。陛下が自由すぎて、フェオドール様は雁字搦めで。そのうちにすれ違ってしまって」  どうやら、お兄ちゃん大好きを拗らせたうえに他力がねじ曲げたっぽい。そうなると面倒だ。まずは分離が大事になってくる。 「今回の犯人、フェオドール様だと思う?」 「そうは、思わないけれど……。フェオドール様、なんだかんだで今も陛下の事お好きですし……隠してるつもりみたいですけれど」 「あの方にこんな事はできませんよ。けっこう単純ですもの」  褒めているのか貶しているのか、微妙なラインになってきた。  だが大きく言える事は、使用人達もフェオドールが画策した事ではないと思っている事だ。これは大きい。     
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