囚われた王子

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「第一、我等は直前までアルヌール陛下と一緒にお酒を飲んでおりました。先に二名が就寝の準備に向かい、アルヌール陛下が退室して以降は誰も離れておりません。それはここにいるジョルジュ将軍、その場にいた騎士団全員、そして部屋に給仕に来ていたメイド達が証言してくれるでしょう。何の証拠をもって、我等が陛下を襲ったなどと妄言を展開するのか。場合によっては他国の使者でもある我等の名誉にも関わります」  軽く前に出たランバートに気圧されるように老人達がたじろぐ。  これを楽しそうに見ているのがアルヌールだ。溜飲が降りたと言わんばかりにニヤリと笑っている。本来はこの人がやるべきことだろうに。 「先に二名が退室していたとの事ですが」  不意に違う方向から声がした。  視線を向けるその先で、まだ若い身なりのいい男がこちらを見ている。短い銀髪に、鋭い緑眼の長身の男は涼しい様子でこちらを見ている。 「その二名が。と、言う事はないのですか?」 「はぁ?」  思わずボリスが低い声を発した。どうにも散々なやりとりに苛立っているのは背中に感じていたが、事ここに至って爆発寸前とみえた。 「いえ、本当に就寝の準備をしていたのかと思いまして。騎士団は手練れも多いと聞きますし、事前に潜んでいたのではと」  とても静かに、だが過分に失礼を詰め込んだ男の言葉にボリスが前に出る。目が完全に据わっていた。 「お言葉だけど、俺達が部屋から出てくるのをそこの殿下が見ているけれど」  視線を向けられたフェオドールがビクリと肩を震わせる。これには長身の男も目を僅かに見開き、冷たい視線でフェオドールを見据えた。 「それは本当でございましょうか、殿下」     
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