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だがこれを、ジョルジュが剣を抜いて止めた。
「何事です、老将。私はフェオドール殿下の側近です、側に」
「陛下の言葉が理解できませんかな、ニコラ殿。側仕えも許さぬと仰せだ」
「あの方の世話をするのが……」
「ニコラ、逆らえば謀反とする」
アルヌールの言葉に、今度こそニコラは瞳を吊り上げる。憎悪の混じる視線は、到底王家に仕える者ではない。
「この件は徹底的に捜査をする。王に弓引く行いだ、許すわけにはゆかぬ」
それだけを冷たく言い放つと、アルヌールは煩い面々を部屋の外に出してしまった。
静かになった室内には、ジョルジュとランバート、そしてボリスだけが残された。
「面倒をかけて悪いな、お前達。さぞ不快だっただろう。王として、無礼を詫びよう。すまなかった」
苦笑と心労の見える様子のアルヌールに、ランバートは苦笑で返す。王らしい姿ではあったが、なんだか不憫だった。
「なぜ、フェオドール殿下を拘束なさったのでしょう? 正直、あの方にこんな陰湿かつ準備万端な事ができるとは思えませんが」
ボリスの言葉に、アルヌールが苦笑する。そして鷹揚と頷いた。
「分かっている。一つはあの側近、ニコラと切り離したかった。そしてもう一つは、刺激すれば動くだろうと思ってな」
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