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素直じゃない(ボリス)
男の給仕の服を借りて、手にはあいつの夕食を持ってジョルジュの後に続いた。終始無言、静かについていく。
連れてこられたのは奥院の端にある部屋。普通の扉を開けるとそこは警備の兵の部屋で、二人の兵が常駐していた。その奥にもう一つ扉があり、警備部屋からのみ開く小窓がある。
「お前等も休憩いってこい。その間は俺がいる」
「いいのですか、将軍」
「二時間程度で戻って来いよ」
「分かりました」
一礼して出て行く兵士。ジョルジュは確認してドアに鍵をかけ、ボリスに溜息をついた。
「物好きだな、お前さんは。まぁ、あまり苛めてくれるなよ」
「そんなつもりないけれど?」
「……お前さん、自分の今の顔を知っているか?」
知っている。多分、楽しいんだろう。
ジョルジュがドアを開けてボリスを奥の部屋の中に入れる。明かりはなく、鉄格子のはまった窓から月明かりが差し込むばかり。
簡素なテーブルに、椅子が二脚。ベッドも簡素なものが一つ。ただそれだけの部屋だった。
その窓際、月明かりの差すベッドの上でフェオドールは膝を抱えて顔を伏せていた。小さく丸まっている。
「お食事です」
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