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兄貴の性癖もどうかと思うけれど、対極にある自分も大概だ。これは親にも知られていない。仲間も気付いていても知らないフリをしてくれる。
ここに来たいと思ったのは、連行されていく中で見たフェオドールの顔が好きだったから。屈辱や、驚きや、絶望が見える目に惹きつけられたから。
フェオドールはまた新たな涙を浮かべ始める。真一文字に結ばれた口がプルプルしている。それでも声は上げずに、震えながら耐えている。またゴシゴシ擦ろうとした手を掴んだボリスは顔を寄せて、目尻に唇を寄せた。
「!」
「擦ったら痛くなるけれど?」
そう、そういう驚いた顔が好き。大きな目を更に開いてこちらを見ている。
もう片方も溢れ落ちる前に唇で触れた。少しくすぐったそうな仕草がをするフェオドールが、状況を理解できずにオロオロしている。
「なにそれ、面白いね君。玩具みたい」
「失礼な!」
「まぁ、知ってる。ところでご飯、どうするの? 冷めるけど」
「いらない!」
意地っ張りな表情で言ったフェオドールは手を払うように体を振り回す。だが途端に鳴ったのは、大きな腹の虫だった。
「ぷっ、ふふふふふふふふふっ」
「な、なぁ!! 笑うな!」
「だって……あっ、はははははっ!」
「無礼者!」
「いや、盛大な腹の虫響かせて何が無礼なのさ。やせ我慢して」
「煩い!!」
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