375人が本棚に入れています
本棚に追加
もう怒鳴るばかりのフェオドールは耳まで真っ赤にしている。ひとしきり笑ったボリスは側を離れてフォークにゆで野菜を一つ刺すと、それをフェオドールの口の前に持って来た。
「はい、あーん」
「バカにしてるのか!」
「だって、そんな事してるとまた腹の虫がなるよ?」
こう言えば、流石にフェオドールは黙り込む。そしておずおずと小さな唇を開けた。
放り込んだゆで野菜を咀嚼して、飲み込む。言葉では拒絶しても、空腹に食べ物が入った安堵感はあるのだろう。緩まった表情に、ほんの少し笑みが浮かんだ。
可愛い顔で笑えると思う。元の素材は悪くないんだ。心がトゲトゲ過ぎるけれど、自然な顔は毒気が抜けている。
無言で、今度はウィンナーを差し出した。今度は反応が早くてすぐに口に入れる。もぐもぐと唇が動いている。
「動物の餌付けって、こんな感じかな?」
思わず言ったらフェオドールは顔を真っ赤にして睨み付け、立ち上がって椅子に座る。そしてトレーを抱えて食べ始めた。
ボリスもその前に座る。そして食べている様子をずっと見ていた。
「見るな、気が散る」
「いや、可愛いじゃん。小動物っぽいね。クソ生意気だけど」
「いちいち失礼な奴だな!」
君もいちいち反応するよね。それが面白いんだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!