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一通り食べて、腹が満たされたらどうするか。見ていたら、やっぱり落ち込んだ。もの凄く落ち込んでいるのに意地っ張りだから目の前のボリスを睨み付けている。その目が可愛いなんて言えば、どんな顔をするんだろう。
「その目、俺はゾクゾクするけど襲われたいの?」
「変態!!」
「反応も好きだけど、やっぱ誘ってる?」
「誰がお前なんか誘うか!」
「違うの? 今なら伽もしてあげるよ。突っ込まれんの君だけど」
「やめろ!!」
ズザーッ! という効果音がつきそうな勢いで引かれた。予想よりも大きな反応に満足してボリスは笑う。流石にそんな気はないのだ。相手は王族だし、襲ったら流石にまずいのは明らかだ。
「まぁ、それだけ元気なら大丈夫でしょ。暫く大人しくしてるんだね」
「……兄上は」
「ん?」
「兄上は、私の事が嫌いなんだ」
「!」
潮時かと背を向けていた。だから振り向いて、驚いた。
月明かりの下、服の裾を掴んで睨み付けるような目をしたフェオドールの目から、沢山の涙がこぼれていた。口は今度こそへの字に曲がって、ブルブル震えている。
流石に、からかう気にならなかった。心から痛んでいるのがわかったから。
「兄上は私が……私の事なんてもう……」
本格的にバカなの、この子? そんなわけないじゃん。あれはこの子を守る為で、確かに冷たく言ったけれどそれは演技で……。
あぁ、演技と本物が分からないんだ。
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