国境の町ヒレン

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国境の町ヒレン

 国境の関所でシウスからの書簡と身分証をそれぞれが提示すると、軽い身体検査の後、全員が関所隣接の詰め所へと案内された。どうやら彼らが到着したらここに通される事が決まっていたようだ。  二階にある応接室は北の国特有の重厚な内装となっている。温かく織り込んだ模様も美しい絨毯に、立派な暖炉。家具はどれもがっしりと重く丈夫で、かつ年月を思わせる色合いをしている。  冬の期間が長い北の地では、家具をとても大切にする。それこそ何世代にもわたって受け継がれていくものなのだ。これは、スノーネルでも同じだった。 「なんか、故郷に帰った気分」  ハリーが辺りを見回しながらそんな事を言う理由は分かる。ランバートも、ヴィクトランに捕まって暫く過ごした冬の別荘を思いだしていたのだ。 「今、責任者を呼んで参りますのでしばしお待ちください」  案内をして、少し出ていた兵士がワゴンカートに人数分のお茶と軽食を乗せて戻ってくる。促されるまま大きなコの字型のソファーに腰を下ろした面々の前に所狭しと茶器が並んでいった。 「あまりお構いなく」 「いいえ、我等が陛下のお客陣です。丁重にと上からも言われておりますので」     
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