予期せぬ再会

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・ ・ ・ ―――誰も居ない放課後の視聴覚室 「……す……きです」 「んっ? 今、なんて言った?」 「先生が……好き……です」 「莉羅……」 「ずっと、好きでした」 今にも泣き出しそうな私に先生は眩しい笑顔を見せると、静かに首を横に振った。 「俺は教師だ。生徒とは付き合えない」 優しい口調だった。でも、そのキッパリと切り捨てる様な台詞を聞いた瞬間、私は悟ったんだ。 これが、苦くて切ない"失恋"というモノなんだと…… その後、トラウマみたいに心の奥深くに刻まれた言葉……"生徒とは付き合えない" 先生を諦めるしかないんだと自分に言い聞かせるしかなかった。なのに、先生は…… ・ ・ ・ 「莉羅、おいで……」 先生に手を引かれ我に返ると、既に私は彼に抱き締められていた。 「先生……」 六年前には触れることさえ許されなかった愛しい人の胸。その中で私の鼓動は震えに変わる。 「莉羅に会えて嬉しいよ」 「……うそ! 私のことなんて忘れてたでしょ?」 「バカだな。忘れられると思うか? 俺を好きだと言ってくれた生徒を……」 更に強く抱き締めてくる先生が耳元で囁く。 「本当はな、俺も、莉羅のことが好きだったんだぞ……」

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