1207人が本棚に入れています
本棚に追加
・
・
・
―――誰も居ない放課後の視聴覚室
「……す……きです」
「んっ? 今、なんて言った?」
「先生が……好き……です」
「莉羅……」
「ずっと、好きでした」
今にも泣き出しそうな私に先生は眩しい笑顔を見せると、静かに首を横に振った。
「俺は教師だ。生徒とは付き合えない」
優しい口調だった。でも、そのキッパリと切り捨てる様な台詞を聞いた瞬間、私は悟ったんだ。
これが、苦くて切ない"失恋"というモノなんだと……
その後、トラウマみたいに心の奥深くに刻まれた言葉……"生徒とは付き合えない"
先生を諦めるしかないんだと自分に言い聞かせるしかなかった。なのに、先生は……
・
・
・
「莉羅、おいで……」
先生に手を引かれ我に返ると、既に私は彼に抱き締められていた。
「先生……」
六年前には触れることさえ許されなかった愛しい人の胸。その中で私の鼓動は震えに変わる。
「莉羅に会えて嬉しいよ」
「……うそ! 私のことなんて忘れてたでしょ?」
「バカだな。忘れられると思うか? 俺を好きだと言ってくれた生徒を……」
更に強く抱き締めてくる先生が耳元で囁く。
「本当はな、俺も、莉羅のことが好きだったんだぞ……」
最初のコメントを投稿しよう!