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ルウリが目覚めると、空はいつの間にか灰色の雲に覆われていた。
「うわ、大変!お天気悪くなってる………。わたし、いつの間に寝ちゃったのかな」
仕事の合間、森の中のお気に入りの場所で休憩をとっていたのだが、陽だまりの暖かさがとても心地よくて、いつの間にか午睡をしていたらしい。
懐中時計に目をやると3時半を過ぎていた。
「おやつの時間も過ぎちゃった。帰らなきゃ」
ルウリは慌てて立ち上がった。
そこへフワリと風が吹いて、蜂蜜のような色をしたルウリの髪を揺らし、どこからかクスクスと笑い声が聴こえた。
「森巫女ルウリ。やっと起きたようね。早く帰った方がいいわ、雨が降りそうだから」
「シルフィ。やっぱり雨が降るのね」
シルフィは風の妖精。
普段なかなか姿を見せることはないが、ルウリの良い話し相手だった。
「ええ、そうよ。銀瓏月だもの」
「そうだね。あーあ、せっかくお天気だったのにな」
風水晶の森で暮らすルウリは、12ヶ月の中で〈銀瓏月〉の頃がとても嫌いだった。
〈銀瓏月〉というのは、12ヶ月の中の6番目の月のこと。
1年の中でもたくさん雨が降る頃だ。
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