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洗濯ものが乾かないことと、ジメジメした陽気に気分も憂鬱になりがち。
そのうえ、くせっ毛な自分の髪は湿気でまとまらず、余計にイラつく。
そして1年の半分に当たる今月だけは、仕事がひとつ多くなる。
力を秘めた【貴晶石】が採れる『風水晶の森』で、森を護るために施された術でもある〔封鈴〕の点検と交換は、毎年〈銀瓏月〉に行うことが決まっていた。
響きが弱くなった封鈴をそのままにしておくと、森を覆う「護りの結界」の力も弱まってしまう。
結界が弱まると、貴晶石を狙って森を荒らす悪い輩が現れるので、点検や交換は森巫女にとって大切な仕事だった。
けれど、そんな仕事も雨が降ると思うようにいかない。
封鈴の繊細な響きは雨音に消されてしまうことが多いのだ。
雨の中、音に耳を傾け、集中力を必要とする作業はとても大変なものだった。
「長雨にならないといいけど」
ルウリは、暗闇色の大きな瞳で空を見上げながら呟き、ため息をついた。
「ほら、ルウリ。急がないと暗くなるわ。それに………彼が来たみたい」
「えッ!?」
「白い聖獣が森に入ったって。他の風が教えてくれたわ」
「ラシルスが? わ、どうしよう」
ルウリは慌てて森の中を歩き出した。
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