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「早く帰らないと」
「こんなところで呑気に居眠りなんてしてるから」
「だって。今日は約束してない日だよ、一体どうしたんだろ」
首をかしげるルウリに、シルフィはニヨニヨと意味深な微笑みを浮かべながら言った。
「ルウリの顔が見たくなったのよ、きっと」
「まさか………」
「ふふ。顔が赤くなってるわよ、ルウリったら」
「だ……だって、ラシルスに会うの久しぶりだし………」
それなのに、今日に限って森の奥まで来ていた。
昼寝さえしなければ、こんなに慌てる必要もなかったのだが。
ルウリは足を速めた。
「転ばないでよ、ルウリ」
シルフィが心配そうに声をかけた。
「わかってる。でも急がないと。留守だって知って、帰っちゃったら残念だもん。
約束以外の日でラシルスが来るなんて。滅多にない事だもの」
約束の日以外、忙しい彼とはあまり会う機会がなかった。
「ルウリったらほんとにラシルスが好きなのねぇ。でも彼って、冷たくて意地悪だと思うけどナァ。なのにどこがいいのかしら」
「………ラシルスは優しいよ」
「そう? だっていつも不機嫌そうよ、よく怒ってるじゃないの。あ、怒られてるって言ったほうがいいわね」
「そ、それは………。わたしがドジばかりしてるから。それで怒るのよ」
「それは当たってるわね。
………まぁ、でもさ、なんだかんだ言ってもルウリのこと助けてくれるのは彼なわけだし。仕方ないから応援してあげるわ」
「え? 何か言った?」
先を急ぐルウリが振り返って訊いた。
「なんでもないよ。さぁ、急ごう」
ルウリの背中を優しく押すように風が吹いた。
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