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屋敷に着くと、まるでルウリとクロウを待っていたかのように、セバスが正門の前で出迎えた。
「セバスさん、ただいま………戻りました」
「お帰りなさい。そちらの方は?」
「僕はクロウ。僕の御主人様も、もう来てるはずだよね」
「………クロウ様ですね。はい、伺っております」
「セバスさん、わたし売り場に戻るね」
ルウリの言葉に、セバスは頷きながら言った。
「お願いいたします。少し早いですが、あと1時間程で今日の販売は終了とし、正門を閉めるようにとラシルス様に言われておりますので」
「わかりました。それまで店番していますね」
セバスはルウリに何か言いたげな表情を一瞬向けたが、すぐにクロウへと向きを変えて言った
「───こちらへ。ご案内いたします」
*****
(仕方ないよね)
薬草水の売り場に戻り、ルウリは思った。
お祭りの間だけは〈薬草水を売るお手伝いに来ているセバスさんの遠い親戚〉という設定があるのだ。
屋敷にお客様を迎えているとなれば、屋敷内でもその設定を使わなければならない。
ラシルスの顔が見たいが、今は「お手伝いさん設定」なのだ。
屋敷での勝手な振る舞いは控えなければならない。
(1時間経ったらお部屋に籠って、花香水の改良に専念しよう)
売り場に戻ってからしばらくは忙しかったが徐々に客足も途絶え、それから少し経った頃、セバスが来て販売の終了時間を告げた。
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