12・ラシルスと異郷の魔女

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*** キッチンで、とりあえず鍋にお湯を沸かしているとセバスがやってきた。 「遅くなり申し訳ございません。すぐにお夕飯の支度をしますね」 慌てて、しかもなんだかとても疲れている様子のセバスが心配になり、ルウリは言った。 「セバスさん、夕飯は自分で作るからいいよ。セバスさんはお仕事続けて。 お客様もお食事これからなんでしょ?」 「はい、ですが………」 「いいから。お昼も美味しいオムライス食べさせてもらったもの。ここの材料使っていいなら自分で作るから。ラシルスはきっとお客様と一緒にお夕飯だよね………」 「はい。本来なら今夜はルウリ様とご一緒のお夕飯をと仰っていたのですが………。今夜はルウリ様お一人で食べてもらうことになってしまいますね」 「仕方ないよ。わたしは大丈夫。森ではいつも一人でご飯食べてるもの。 ───あ、セバスさんの分も作っておくね。忙しくても食事はしないとダメだよ。 パンケーキと野菜スープくらいしかできないけど、よかったら後で食べてね」 「作らせてしまう上に私の分までとは。ありがたき幸せにございます」 「も~、そんな大袈裟に言わないで」 ルウリは苦笑した。 「まだ明日も明後日もあるんだから。またセバスさんの美味しいお料理、楽しみにしてるから」 ルウリの言葉に、セバスは目を潤ませた。 「ありがとうございます、ルウリ様。ではお言葉に甘えさせていただきます。今宵は調理場も浴室もご自由にお使いくださいませ」 「うん、わかったわ。お仕事頑張ってね、セバスさん」 セバスを笑顔で見送り、ルウリは夕飯の支度に取りかかった。 *** 「ん~。ちょっと塩気が足りないかしら。でもこのくらいがちょうどいいかな。塩分の摂りすぎはよくないしね。パンケーキも上手に焼けたし。上出来、上出来」 食堂で一人、夕飯を食べながらの呟きも、シンと静まり返った室内に寂しげな余韻が残るだけだった。 美味しく出来たとは思うけれど。 やっぱり一人だと味気ない。 風水晶の森での夕飯も、いつも量は少なめだ。 時間も多くとらずに簡単に済ませてしまうことが多い。
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