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一人の食事に時間をかけても楽しくないから。
今夜はセバス用に少し多めに作ってみた分、楽しかったけれど。
(大丈夫なんて言ったけど。やっぱり寂しいな………)
今夜はラシルスと一緒に食事ができると期待していたから余計に残念だった。
ルウリはこれ以上気持ちが暗く沈まないように食べることにだけ集中し、手早く後片付けを済ませ部屋に戻った。
窓の外は夕暮れ色が失せ、暗闇色が増している。
自分の瞳と同じその色を見たくなくて、ルウリは窓を閉めカーテンを引こうとして自然と視線が窓の外から眼下へ移った。
昼間はそれほど気に留めなかったが、そこには平屋の棟があり、一箇所からとても明るい光が溢れている大きな窓が見えた。
そしてそこに………
紅葉色の長い髪の、とても美しい女性の姿が見えた。
───あの人、街でラシルスと一緒に歩いていた………!
(あの人がお客様だったんだ………)
女性は笑顔で会話を楽しんでいる様子だった。
そしてその相手は───、
ラシルスの姿が奥にチラリと見えて。
ルウリはおもわずカーテンを強く引いた。
楽しそうにしている二人を見たくなかった。
きっとこれから二人で夕飯を食べるのだろう。
そんな様子を想像するだけで、なんだかとてもせつない気持ちになった。
(………仕方ないのに)
あの人はお客様で、お客様をおもてなしするのはラシルスの仕事でもあるのだから。
───だから、平気………。
気になるけど。
だってあの人、とっても美人で大人な感じで。
ラシルスと並んで歩いても、とてもお似合いに見える。
(わたし、本当はとても気になってるんだ)
あの二人のことが。
苦しいくらいに。
せつなさと同時に腹立たしい感情も溢れ出る。
この気持ちが、嫉妬だということは判る。
泣きたいのか怒りたいのか、判らなくなるくらい心に余裕がなくなりそうだった。
(わたしってば………子供みたい)
自分自身にも腹を立てながら、ルウリは大きくため息をついた。
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