13・吐息とため息

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部屋に戻ったルウリは、とりあえず何かほかにラシルスの機嫌が直る方法がないものか、いろいろ考えてみた。 音晶石はどうだろう。 夕飯を食べてないのなら、ぜひ糧にしてもらいたいのだが。 (喜ぶかどうかは味次第かな) 前にしょっぱいとか塩辛いとか言われたことがある。 森巫女としてまだ半人前のルウリが作る音晶石は、いつも中途半端なものばかりで、聖獣の糧となり得るほどの力を秘めてはいなかった。 そもそも音晶石の味などルウリには判らない。 前に1度、作った音晶石をこっそり舐めてみたことがあったが、味など感じなかったのだ。 「ラシルスだけが感じる味なのかなァ」 今回作った虹彩(にじいろ)音晶石と蜜彩(みついろ)音晶石がどんな味に出来上がったか想像もつかない。 (マズかったら余計にご機嫌悪くなるだろうし) 他に方法がなければ、やはりこの前ラシルスが教えてくれた「嬉しくなること」を実行しなければならない。 ───でもあれをわたしから言うなんて。 でもセバスさんに頼まれちゃったし。 せっかくラシルスと部屋でお話しできるチャンスだし………。 でもご機嫌の悪いラシルスは嫌だし。 でもでもでもっ! ラシルスの「嬉しくなること」は「わたしに触れること」だから。 それをわたしから「触ってください」なんて恥かしくて言えないよぅっ! 悶々としていたルウリの耳に、廊下を進む足音が微かに聞こえた。 (ラシルスが戻って来たんだ!) 足音は少しずつ近くなり……… 一度止まったように思えたが、セバスの言った通り、隣りの部屋(書斎)の扉が開く音がした。
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