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部屋に戻ったルウリは、とりあえず何かほかにラシルスの機嫌が直る方法がないものか、いろいろ考えてみた。
音晶石はどうだろう。
夕飯を食べてないのなら、ぜひ糧にしてもらいたいのだが。
(喜ぶかどうかは味次第かな)
前にしょっぱいとか塩辛いとか言われたことがある。
森巫女としてまだ半人前のルウリが作る音晶石は、いつも中途半端なものばかりで、聖獣の糧となり得るほどの力を秘めてはいなかった。
そもそも音晶石の味などルウリには判らない。
前に1度、作った音晶石をこっそり舐めてみたことがあったが、味など感じなかったのだ。
「ラシルスだけが感じる味なのかなァ」
今回作った虹彩音晶石と蜜彩音晶石がどんな味に出来上がったか想像もつかない。
(マズかったら余計にご機嫌悪くなるだろうし)
他に方法がなければ、やはりこの前ラシルスが教えてくれた「嬉しくなること」を実行しなければならない。
───でもあれをわたしから言うなんて。
でもセバスさんに頼まれちゃったし。
せっかくラシルスと部屋でお話しできるチャンスだし………。
でもご機嫌の悪いラシルスは嫌だし。
でもでもでもっ!
ラシルスの「嬉しくなること」は「わたしに触れること」だから。
それをわたしから「触ってください」なんて恥かしくて言えないよぅっ!
悶々としていたルウリの耳に、廊下を進む足音が微かに聞こえた。
(ラシルスが戻って来たんだ!)
足音は少しずつ近くなり………
一度止まったように思えたが、セバスの言った通り、隣りの部屋の扉が開く音がした。
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