13・吐息とため息

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ルウリは椅子から立ち上がり部屋のドアを見つめた。 ───ラシルスが近くにいる。 ………わたし、ラシルスに会いたい。 顔が見たい、声が聴きたい。 機嫌が悪いとかそんなの、もうどうでもいいくらい。 ───わたし、ラシルスの傍に行きたい………。 ルウリは二つの音晶石を鞄から取り出しポケットへ入れた。 花香水は明日にしよう。 今夜は音晶石を渡しておきたい。 ルウリは部屋を出て、書斎部屋の扉をノックした。 「───ぁの、ラシルス?」 呼びかけると少しして返事があった。 「………開いてるよ、お入り」 ルウリが部屋へ入ると、壁際のソファーにだらりと寝転ぶラシルスの姿があった。 「まだ起きていたか。もう寝てしまったと思ったよ」 ラシルスはゆっくりと身体を起こしながらルウリに視線を向けた。 その動作や表情が、いつもと違って見える。 (ラシルス、なんだか疲れてるみたい?) 「どうした。何か用か」 「ぁあの、ね。………わたし、音晶石を持ってきたの。………糧になるといいんだけど」 「そこの机の上に置いといてくれ。今はいらない」 「うん。じゃあ置いとくね」 ルウリはおずおずと部屋を進み、言われた通り机の上に音晶石を置いた。 「美味しいといいんだけど………」
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