13・吐息とため息

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「おまえ今日、街へ行ったのか?」 ソファーに腰を下ろしたルウリにラシルスが訊いた。 「行ったけど。どうして知ってるの?」 頷きながらルウリが答えると、ラシルスは眉を顰めた。 「なぜ街へ行った。おまえは今日屋敷で仕事があったはずだ」 「………うん。でも午後はセバスさんが交代してくれることになって。 ちょっとだけ街へ買い物に………。セバスさんが香水の改良に使うように教えてくれた花香水を買いに行ってたの」 「セバスの奴め、あいつのせいか」 「あいつのせいだなんて、何が?セバスさんを悪く言わないで。セバスさんのおかげで花香水が改良できたんだから」 「一人で行ったのか?」 「………そうだけど。ラシルスどうしてそんなこと聞くの?」 行ったときは一人だった。 けれど帰りはあのクロウと名乗った青年と一緒で。 クロウに髪と瞳の色をモールの実を使って染めていると言い当てられたことを、ラシルスに言わなければと思ってはいるのだが。 ラシルスがなぜそんなことを聞いてくるのか、どうしてそんなに不機嫌なのか、先に理由が知りたかった。 「あのクロウとかいう青年と一緒だったそうだな」 「帰りだけよ。クロウさんには街でぶつかりそうになって、わたしが落とした荷物を拾ってくれて。ラシルスのお屋敷へ行くところだって言うから………方向が同じだから一緒に帰ってきただけ」 「端折(はしょ)ってないか、話」
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