20・ぬくもりの音をあなたへ

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「それから、音晶石をたくさん作ったんだろ?よく頑張ったな」 (───らっ、ラシルスが褒めてくれた!) 嬉しくて嬉しくて。 ルウリは こぼれるような笑顔になった。 ***** キラキラと輝いて見える目の前の少女の微笑みに、ラシルス・アーヴェは暫し見惚れた。 それは闇空で瞬く星のようで。 とても愛しく思った。 そしてどんな光よりも眩しく清らかであるとラシルスは感じた。 (………ルウリ、おまえはこの世で………この世界でひとつだけの尊い輝きだ) どんな貴晶石よりも なによりも、 大切な俺の光だ………。 ───あのとき、 闇の中から「ここへ来てほしい」と響いた小さな(ルウリ)に出逢ったことは奇跡だった。 最初、貴晶石が落ちているのかと思ったが、それは小さな精霊人で。 闇狭間へ落とされた贄だと言った。 脆くて弱そうな輝きは、羽ばたきひとつで吹き消してしまえるような儚さだったのに。 いつからか、眩しい存在になった。 気まぐれに拾ったはずだった。 いつでも喰らえるはずだったのに。 いつの間にか……… 守りたいものになっていた。 そしてかけがえのない存在に……… これからもあり続けるだろう。 ◇◇◇ 「おかえりなさい、ラシルス」 ルウリは家の扉を開けながらラシルスを迎えた。 「さあ、どうぞ入って」 煌めく笑顔で。 暖かく 優しい光に満ちた場所へ。 『森巫女ルウリと白い魔獣【完全版】改め〈風水晶の森異譚*初夏~晩秋編〉』(終)
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