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「それから、音晶石をたくさん作ったんだろ?よく頑張ったな」
(───らっ、ラシルスが褒めてくれた!)
嬉しくて嬉しくて。
ルウリは こぼれるような笑顔になった。
*****
キラキラと輝いて見える目の前の少女の微笑みに、ラシルス・アーヴェは暫し見惚れた。
それは闇空で瞬く星のようで。
とても愛しく思った。
そしてどんな光よりも眩しく清らかであるとラシルスは感じた。
(………ルウリ、おまえはこの世で………この世界でひとつだけの尊い輝きだ)
どんな貴晶石よりも
なによりも、
大切な俺の光だ………。
───あのとき、
闇の中から「ここへ来てほしい」と響いた小さな光に出逢ったことは奇跡だった。
最初、貴晶石が落ちているのかと思ったが、それは小さな精霊人で。
闇狭間へ落とされた贄だと言った。
脆くて弱そうな輝きは、羽ばたきひとつで吹き消してしまえるような儚さだったのに。
いつからか、眩しい存在になった。
気まぐれに拾ったはずだった。
いつでも喰らえるはずだったのに。
いつの間にか………
守りたいものになっていた。
そしてかけがえのない存在に………
これからもあり続けるだろう。
◇◇◇
「おかえりなさい、ラシルス」
ルウリは家の扉を開けながらラシルスを迎えた。
「さあ、どうぞ入って」
煌めく笑顔で。
暖かく 優しい光に満ちた場所へ。
『森巫女ルウリと白い魔獣【完全版】改め〈風水晶の森異譚*初夏~晩秋編〉』(終)
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