キラキラ輝く

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唐松岳行き当日、真衣子の車で白馬八方へ向かう。麓からゴンドラを乗り継いで、一気に標高1830mまで登りつめると、そこから頂上まで約4時間、自分の足で登る。 「すごくいい天気でよかったね」 ほんとに、私の気持ちとは裏腹に雲一つない真っ青な空が広がっている。 「どう?久々の山は?そういえば、晶って北アルプスは2度目だっけ?」 真衣子が何かと話しかけてくるが、返事ができない。そんな気分にもならないし、第一、山に登るのは3年ぶりだ。かなりきつい。  山に来ると、どうしても思い出してしまう。  巧は山が好きな人だった。好きどころではない。真衣子から弟だと紹介された5年前にはすでに山岳ガイドの道を目指しているところだった。大沢巧、同い年の彼とはなぜかすぐに打ち解けた。彼は、わたしが知らない山の話ばかりしていたが、それでも話の内容にわたしは引き込まれていた。そして、会ったばかりなのに、話が弾んだ勢いで、 「速水さんも一緒に山に行きませんか?」 と誘われたのだ。初めてのデートの誘いが山なの?って思ったが、あまりにも純粋なその姿勢に、 「どこにつれてってくれるんですか?」 と思わず言ってしまった。なんでそう言ってしまったのか。普通は断るだろうと思う。だけど、山のことを話しているときの巧のキラキラした目が、わたしを山へ誘(いざな)ったのだった。  
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